熱中症から社員を守る!中小企業が取るべき7つの安全対策


「社員が熱中症で倒れたらどうしよう…会社としてどんな対策を取るべきか分からない」そう思う方もいるかもしれません。

実は、中小企業においても、熱中症対策は義務化が進み、具体的な行動が求められるようになっています。特に、社員の健康と会社の信頼を守るには「予防・対応・法令遵守」の3つの柱を押さえることが重要です。

この記事では、現場でできる熱中症の予防策、応急処置、作業環境の整備方法、義務化された法令内容、そして保険などの備えについて、経営者として知っておくべき5つのポイントを詳しく解説します。

熱中症とは?症状と重症度の見分け方

暑さの中での作業が続くと、体調不良が心配になりますよね。熱中症の症状と重さを理解すれば、早めに対処することが可能です。

・軽症・中等症・重症の違いとは

・作業中に見逃してはいけないサインとは

社員を守るために、まずは正しい知識から身につけましょう。

軽症・中等症・重症の違いとは

熱中症には段階があり、それぞれ症状の深刻さが異なります。まず軽症の場合は、立ちくらみや筋肉のけいれん、汗が止まらないといった比較的軽い症状が見られます。これらは休憩や水分・塩分の補給で改善することが多いですが、放置すると症状は悪化します。

中等症になると、頭痛や吐き気、倦怠感が強くなり、意識がぼんやりすることもあります。この段階では医療機関での診察が望ましく、自己判断での対応はリスクが高くなります。

重症になると、意識がない、けいれんが起こる、体温が著しく上がるなど、命に関わる危険な状態に陥ります。このような場合はすぐに救急車を呼び、迅速な医療対応が必要です。症状を段階ごとに理解し、早い段階で適切な行動をとることが大切です。


作業中に見逃してはいけないサインとは

現場での作業中に発生する熱中症は、初期症状を見逃さないことが鍵です。たとえば、普段よりも汗の量が多い、やけに口数が減った、ぼーっとしているといった様子は見逃してはいけないサインです。本人が自覚していない場合もあるため、周囲の気づきが大切になります。

また、帽子をかぶっていても顔が赤くなっていたり、目がうつろだったりする場合は、すぐに作業を中断させ、涼しい場所で休ませる判断が必要です。作業中に異変を感じたら、我慢せず早めに声をかけ合う環境づくりも、熱中症予防の大事なポイントです。

熱中症の応急処置と正しい対処法

もし社員が倒れたら、何をすればいいのか不安ですよね。応急処置の手順を知っていれば、落ち着いて対応できます。

・倒れたときの初期対応の流れ

・救急車を呼ぶ判断基準とは

いざという時に備えて、正しい対応方法を確認しておきましょう。

倒れたときの初期対応の流れ

作業中に誰かが熱中症の疑いで倒れたとき、まず最初に行うべきことは安全な場所への移動です。日陰や冷房の効いた場所に移し、体を安静にさせましょう。次に、服をゆるめて風通しをよくし、うちわや扇風機で体を冷やすようにします。

冷却は、首・脇・足の付け根といった太い血管が通る場所を意識して行うのが効果的です。冷たいタオルやペットボトル、氷があれば活用しましょう。意識があり、吐き気がなければ水分と塩分の補給を行い、症状の改善を待ちます。

この段階で大切なのは「慌てないこと」と「周囲と協力すること」です。一人で対応しようとせず、可能なら他の社員にも応援を頼み、万が一に備えて救急要請の準備も同時に進めておくと安心です。


救急車を呼ぶ判断基準とは

熱中症の症状が重い場合、すぐに医療機関の支援が必要です。次のような状態が確認されたら、迷わず119番通報してください。

まず、意識がはっきりしない、呼びかけに反応しない、または言動がおかしいといった様子が見られる場合は、すぐに救急搬送が必要です。また、自力で水が飲めない、吐き気が強い、けいれんしている、体温が異常に高いと感じる場合も同様です。

救急車を呼ぶかどうか迷ったら、「少しでもおかしいと思ったら呼ぶ」という考え方が基本です。時間が経つほど症状は悪化する可能性があるため、判断を先延ばしにしないことが重要です。現場での冷静な判断と迅速な行動が、社員の命を守る鍵となります。

作業現場での熱中症を防ぐ実践対策

普段の作業現場では、暑さに慣れて油断しがちですよね。でも、ちょっとした工夫で熱中症は未然に防げます。

・休憩とシフトの調整方法

・現場に適した冷却ポイントの設置方法

社員の体調を守るための環境づくりを始めましょう。

休憩とシフトの調整方法

熱中症を防ぐためには、働き方の見直しがとても重要です。特に気温が高くなる時期には、こまめな休憩を取り入れることが基本です。たとえば、気温や湿度が高い日は30〜45分ごとに10〜15分の休憩を設けることで、体への負担を大きく軽減できます。

また、作業の時間帯にも工夫が必要です。真夏の11時〜15時は特に暑くなるため、その時間帯は屋外作業を避け、午前中や夕方に作業を集中させると安全性が高まります。可能であれば交代制や時差出勤を取り入れ、無理のないスケジュールにすることが理想です。

作業内容によっては、軽作業と重作業のバランスをとることも有効です。管理者が現場の状況を把握し、暑さ指数(WBGT値)を基に柔軟に判断することで、事故のリスクは大きく下がります。


現場に適した冷却ポイントの設置方法

作業中に一息つける「涼しい場所」を現場内に設けることも、熱中症対策には欠かせません。屋外ならテントやタープで日陰を作り、風通しのよい場所を選ぶと効果的です。簡易冷風機やポータブル扇風機を置くことで、より快適に休憩できます。

加えて、冷たい飲み物や塩分補給ができるスペースを確保することも大切です。作業員が気軽に立ち寄れる場所にしておくことで、水分補給の習慣化にもつながります。

特に重要なのは、「休みたくても休みにくい空気」をなくすことです。管理者が率先して休憩を促す文化を作ることで、全体の安全意識も高まります。冷却ポイントは、設備だけでなく、心理的な安心感を作る役割も果たすのです。

現場作業員の水分・塩分補給の事例紹介

水分を取っているつもりでも、熱中症になることってありますよね。正しいタイミングと量を知ることで、予防効果はぐっと高まります。

・どのくらいの頻度・量が理想か

・自作もできる熱中症対策ドリンクのレシピ

身体が欲しがる前に、補給のリズムを整えましょう。

どのくらいの頻度・量が理想か

熱中症を防ぐためには、「のどが渇く前に飲む」ことが何よりも重要です。目安としては、作業前・作業中・休憩中・作業後といったタイミングで、こまめに水分を摂取するのが効果的です。一度にたくさん飲むよりも、少量を何度も飲むほうが体に吸収されやすくなります。

気温や湿度、作業の強度によっては、1時間あたり500ml以上の水分が必要なこともあります。水だけでは汗と一緒に失われる塩分やミネラルを補えないため、スポーツドリンクや経口補水液の併用が推奨されます。とくに、塩分濃度が0.1〜0.2%程度の飲料が体への吸収に優れていると言われています。

また、トイレを気にして水分を控える人もいますが、それが原因で体調を崩す方がリスクは大きいと考えましょう。定期的な補給を習慣づけることが、現場での安全を支える基本です。


自作もできる熱中症対策ドリンクのレシピ

熱中症対策に適した飲み物は市販のスポーツドリンクだけではありません。自作することでコストを抑えながら、必要な成分をしっかり摂取できます。

もっともシンプルなレシピは、水1リットルに対して塩を1〜2グラム、砂糖を20グラム程度加える方法です。さらに、レモン汁を少し加えると風味もよくなり、飲みやすさがアップします。この組み合わせは、汗で失われた塩分や糖分を効率よく補うことができ、熱中症予防にぴったりです。

現場に常備する場合は、事前に大きめのポットなどに作っておき、冷蔵庫や保冷バッグで保冷しておくと便利です。味の好みに合わせて濃さを調整したり、冷凍したフルーツを加えたりすることで、飽きずに継続しやすくなります。

経済的にも優しく、従業員の健康管理にも役立つ自家製ドリンク。簡単に作れて効果も高いため、ぜひ現場で取り入れてみてください。

熱中症対策に効果的な服装・冷却設備とは

どれだけ注意していても、暑さは体にダメージを与えますよね。だからこそ、装備や環境を整えることが大きな防御力になります。

・空調服・ミスト・日除けなど設備導入のポイント

・高齢作業員にも配慮した装備選び

作業現場を守る具体策をチェックしていきましょう。

空調服・ミスト・日除けなど設備導入のポイント

近年の暑さ対策の主役として注目されているのが「空調服」です。服の内側に小型ファンがついており、外気を取り込んで身体を涼しく保つ仕組みで、屋外作業の現場では導入が進んでいます。初期費用はかかりますが、作業効率や安全性の向上を考えれば、十分に価値があります。

また、ミストシャワーの設置も有効な手段です。作業場の出入口や休憩ポイントに設けることで、作業員が体温を下げやすくなります。あわせて、風通しの良い日陰スペースを設けることで、現場全体の快適度が上がり、熱中症リスクがぐっと減ります。

これらの設備は、単に「涼しい」だけでなく、休憩の質や体の回復スピードにも関わってきます。結果的に、作業の継続性や現場の安全意識の向上にもつながるのです。


高齢作業員にも配慮した装備選び

高齢の作業員は若い人よりも暑さに対する感覚が鈍く、体力の回復にも時間がかかります。そのため、装備選びにはより慎重な配慮が求められます。たとえば、軽くて通気性のある素材を使った作業服や、締めつけの少ない帽子など、負担を減らす工夫が必要です。

また、高齢者の中には空調服の音や感触を気にして使用をためらう方もいます。そうした場合には、冷却タオルや首掛け扇風機など、よりシンプルで扱いやすい代替品を提案すると受け入れやすくなります。

加えて、こまめな声かけや、本人のペースを尊重した作業配分も大切です。熱中症を防ぐのは設備だけではなく、「人への気遣い」も大きな要素になります。年齢に関係なく、安心して働ける現場づくりを意識しましょう。

中小企業が注意すべき法令改正と罰則について

熱中症対策は「努力義務」では済まされなくなっていますよね。法律としての義務がある以上、知らなかったでは済まされません。

  • 2025年から義務化された熱中症対策とは【対策義務化】

  • 労働安全衛生規則で求められる具体的な対応【労働安全衛生規則】

経営リスクを防ぐためにも、必ず押さえておきましょう。

2025年から義務化された熱中症対策とは【対策義務化】

2025年6月から、熱中症対策はすべての事業者に対して法的な「義務」となりました。これは、労働環境において熱中症のリスクが年々高まっていることを受け、国が明確に対応を求めたものです。対象となるのは建設業や製造業といった屋外・高温環境での業務だけでなく、暑さがこもりやすい屋内作業にも及びます。

この改正では、気温や湿度、作業負荷に応じた作業時間の見直しや休憩の確保、水分・塩分補給の指導、熱中症に関する教育の実施などが求められています。また、WBGT(暑さ指数)を参考にした作業管理が推奨されており、具体的な数値基準に基づいた運用が必要です。

対策を怠った場合、万が一事故が起これば「会社としての安全配慮義務違反」と見なされ、法的責任を問われる可能性もあります。経営者としては、リスク管理の一環として早急な対応が不可欠です。


労働安全衛生規則で求められる具体的な対応【労働安全衛生規則】

労働安全衛生規則においても、熱中症対策は明文化されており、事業者には以下のような具体的な義務が課されています。たとえば、暑さが厳しい時期には「適切な休憩場所の確保」や「冷却設備の設置」が推奨されるほか、「健康診断結果をふまえた作業の調整」も必要とされるケースがあります。

また、2025年の法改正を受けて、熱中症のリスク評価と対策実施の記録を取ることも、労基署による指導対象となり得ます。さらに、指導に従わない場合には、労働安全衛生法違反として「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることもあるため、法的リスクとして軽視はできません。

中小企業においては「リソースがない」「人手が足りない」といった事情もあるかもしれませんが、熱中症対策はすでに「やるか・やらないか」ではなく「やるのが当然」のフェーズに入りました。社内体制や就業規則への反映も含めて、早めの整備を進めていくことが、結果的に社員と経営の両方を守ることにつながります。

熱中症リスクに備える保険の活用方法

どれだけ備えても、事故がゼロになるとは限りませんよね。だからこそ“万が一”に備えた保険の活用が安心につながります。

・万が一の事故に備える保険の種類とは

・株式会社UPDATEが提供する熱中症関連サービス・補償

事後のリスクも視野に入れた備えを検討してみましょう。

万が一の事故に備える保険の種類とは

熱中症による事故が発生した場合、企業として問われるのは労災対応だけではありません。治療費、休業補償、企業の信頼低下といった損失が一気に押し寄せてきます。これらに備えるためには、適切な保険の加入が有効です。

企業が検討すべき保険には、「労災上乗せ保険」「傷害保険」「使用者賠償責任保険」などがあります。これらは、社員が熱中症で入院・通院した際の医療費補助や、企業が被る損害に対する補償が組み込まれていることが多く、熱中症が業務起因である場合でも柔軟に対応できます。

とくに「使用者賠償責任保険」は、企業が安全配慮義務違反とされて損害賠償請求を受けた際にカバーされる保険です。こうした保険にあらかじめ加入しておくことで、万が一の際の経済的損失を大きく減らすことができます。


金沢市の保険代理店㈱UPDATEでご案内している熱中症関連サービス・補償

当社では、熱中症リスクを含む「労働災害リスク」に備えた法人向け商品を展開しています。たとえば、使用者賠償責任保険の中には、熱中症による従業員からの損害請求にも対応可能な補償が含まれています。

さらに、当社では補償だけでなく、「リスクマネジメント支援サービス」も提供しており、企業ごとのリスク診断や安全教育コンテンツの提供など、予防から万が一の対応までをトータルでサポートしています。これにより、経営者は日常業務に専念しつつ、安心して従業員の安全対策を進めることが可能です。

「事故が起こる前に対策を」「もしものときの備えを」という2つの視点を持って、保険を“リスク対策の一部”として組み込むことは、今後の企業運営にとって重要な要素となるでしょう。

まとめ

熱中症は、命に関わるリスクであるにもかかわらず、「気をつけていれば大丈夫」と軽視されがちな問題です。しかし、2025年の法改正により、企業には明確な対策義務が課せられるようになりました。特に中小企業にとっては、限られた人員と予算の中でいかにリスクを抑え、社員の安全を確保するかが大きな課題です。

本記事で紹介した通り、休憩や水分補給、冷却設備の導入といった基本的な対策に加え、法令への対応や保険による備えも含めた多角的な取り組みが求められます。社員の健康を守ることは、単に事故を防ぐだけでなく、企業の信頼や生産性の維持にも直結する重要な経営戦略です。

今後さらに気温の上昇が予測される中で、「万全の熱中症対策を講じること」は、企業としての責任であり信頼の証とも言えるでしょう。この機会に、自社の対策を見直し、実効性のある安全管理体制を整えていきましょう。

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